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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)350号 判決 1992年11月11日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  原判決添付物件目録七ないし九記載の各物件の表示を本判決添付物件目録記載のとおり更正する。

三  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の申立

控訴人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の予備的財産分与の申立を棄却する。控訴費用は被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文一、三項と同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決四枚目表六行目冒頭の「から」の次に「来た」を加え、同行末尾から七行目にかけての「これをしないと」を「その要求に応じなければ」と、同裏六行目の「現状」を「原状」とそれぞれ改める。

2  同五枚目裏五行目の「被告には」を「被控訴人は」と、同一一行目の「一ないし九」を「一ないし三、五ないし九」とそれぞれ改め、同末行冒頭の「社」の次に「所有名義」を加え、同六枚目裏一〇行目の「新光ビニールで得られた」を「訴外会社で得た」と、同七枚目表一〇行目の「本件物件」を「右一〇、一一の土地建物」と、同裏九行目の「また」から同行の「以後は」までを「同五〇年三月に娘が結婚した後の同年七月以降、控訴人は被被控人に」と、同一一行目の「渡してくれたもの」を「渡してくれることになったものの、それも」とそれぞれ改め、同八枚目表一〇行目の「共同」の次に「で」を加える。

三  証拠(省略)

理由

一  当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

原判決一〇枚目裏末行の「挙げたうえ」の次に「事実上の」を加え、同一二枚目裏六行目の「親戚の借りた」を削除し、同一七枚目裏八行目の「被告に」を削除する。

二  控訴人は、本件離婚請求の放棄をする旨陳述するので、右請求の放棄が許されるか否かにつき検討する。

ところで、人事訴訟手続法は、民事訴訟法二〇三条中請求の認諾に関する規定は婚姻事件に適用しない旨定め(人事訴訟手続法一〇条)、かつ、右規定は養子縁組事件及び親子関係事件に準用する旨定めているが(同法二六条、三二条)、これらの事件に関して請求の放棄については民事訴訟法の適用を排除する規定は存在しない。このことから、これらの規定の反対解釈により婚姻事件等については請求の放棄が許されうるとも解しえないでもない。しかし、これらの規定が定められたのは、これら人事訴訟では、その対象となる身分関係が当事者の自由な解決に委ねることのできないものであり、その審理については職権探知が行われることから、いったん訴えが提起された以上は当事者による任意の処分は許されず判決によって解決すべきとされることによるものである。したがって、右規定が定められた趣旨にしたがえば、請求の認諾のみならず請求の放棄、和解も同様に許されないものと解するのが相当であり、婚姻事件については、人事訴訟手続法一〇条を準用して請求の放棄は許されないものと解する。

そうすると、控訴人の右請求の放棄はその効力を有しないものといわざるをえない。

三  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、なお原判決添付物件目録七ないし九記載の各物件の表示には一部脱漏があるので、これを本判決添付物件目録記載のとおり更正し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(別紙)

物件目録

七 同所四番地の二、五番地の一、同番地の三所在

家屋番号  同町一二一八番

軽量鉄骨造スレート葺二階建工場

床面積   一階  七七一・二〇平方メートル

二階  四三四・三八平方メートル

付属建物

鉄筋コンクリートブロック造スレート葺平家建電気室

床面積   五七・四五平方メートル

八 同所四番地の二、五番地の一所在

家屋番号   一一七八番二

鉄骨造スレート葺平家建工場

床面積  三〇七・一〇平方メートル

九 同所五番地八、同番地三、同番地二所在

家屋番号  五番八

鉄骨造陸屋根二階建事務所

床面積  一階  一九〇・九五平方メートル

二階  二〇四・四八平方メートル

付属建物

鉄骨造陸屋根四階建倉庫

床面積  一階  三一三・三四平方メートル

二階  四一九・三四平方メートル

三階  三七三・五〇平方メートル

四階  三七三・五〇平方メートル

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